ぼちぼちおうち生活

浅く薄く移ろいゆく趣味と住居の覚え書き。

「捨てる女」

「身体のいいなり」に続いて、次は「捨てる女」を読んでみた。 ところが。なんと同じ著書であるにもかかわらず文章がまるで違う。 文章というか文体というか、「身体のいいなり」とはかけ離れたとても読みにくい文章であった。はっちゃけた口語体で書くにしてももう少しやりようがあると思う。個性を打ちだそうとしたんだろうか。いっそのこと、本人に書き直して改訂版を出して欲しいくらいだ。 で、勝手に、断捨離の過程を書いた本なのかと誤解した私がいけないんだけど、「捨て暮らし」なんて言う割にはぬるい。食料品の整理をするのは誰でも一般的にしていることで、乾物は使うか捨てるかするしかないし、サハリンのおばあちゃんがくれたという砂糖どっさりのバラ科のジャム(木イチゴとかベリー類?)や梅酒の梅なんかは20年くらいは余裕でいけるから、12年!もはや別の生き物に、とかいわれても、別に~って思っちゃうし、ちなみにこのあいだ私は15年くらい前に買ったマーマレードをついに処分したのだが、冷蔵庫にずっと入れてたから砂糖ががっちり分離して固まってたけど味は大丈夫だったよ、って関係ないね。 豚を飼うにあたって借りた廃屋の大量のモノを処分するのだって、そりゃ捨てるでしょ。他人が夜逃げして残していった荷物、使う人なんていないでしょ。整理するのが大変だったのは分かる、というか想像できるけど、そのあたりをもっと書いてくれたらいいのに、自分が退居したあとにタイ人のスナックになってたあたりになんであんなにページを割くかね。っていうかどうでもいいよ・・・読んでて楽しいわけでもないし・・・。 この方は結局何を持っていたのかというと、大量の図録と、大量の製本の材料と道具と、御自身で描かれたイラスト20年分と、羊皮紙や和紙などの材料を使った美術品と言えるような古い蒐集本を山のように。 何度も何度も、都内の狭い部屋に沢山の本棚、細い道を残して床には本が積み上がり、と書いていらっしゃったが、大量に処分した後に引っ越す先として必要な条件が、「最低七棹か八棹の本棚が置ける壁が欲しい。それと本棚の面から最低六十センチの空間が欲しい。でないと並べた本を見ることができないから。」とな。これを23区内で。減らした後ですよ。 都内の狭い部屋・・・。この人にとって狭くない家というのはどういう家をいうのであろうか。ああそういえば豚を飼うために借りた家は、20畳くらいの厨房があるのでしたね・・・。 「身体のいいなり」でも「捨てる女」でも、貧困だのお金がないだのおっしゃってるが、その家に住んでアパートも借りて寝るための中古マンションをキャッシュで買って、ええとそれからどうだっけ、一度時系列にしてみないとよくわからないけど、とりあえずウチよりだいぶ収入がありそうなことだけは理解した。貧困って、どのくらいのラインからを言うんだろう。 ご実家は鎌倉なのだそうで、大物の荷物はそちらで預かってくださる。実にうらやましい。二十代の前半の頃のエピソードとして、小学校時代の答案や作品を半分にしてくれと言われて、「普通親って、そういうのって取っておきたいものなんじゃないのかね」、と書いていらっしゃるが、小学生の頃の答案や作品を二十歳過ぎまでどさっととっておく方が珍しいと思うんですけどどうですか。せいぜい出来のいいやつを、ちょいちょいっと取っておくくらいだと思うんですけど。・・・うち?私の実家にはもう私のモノはありませんよ。兄のモノはありますがね。先日、私の卒業証書を捨てるというので引き取ってきて、それで最後だと思います。
捨てる女

捨てる女

  • 作者: 内澤 旬子
  • 出版社/メーカー: 本の雑誌社
  • 発売日: 2013/11/20
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
この本の中で最も見るべきところは、蒐集本についての記述でしょう。どんなに魅力的で希少な本であったか、どんな面白そうな図録を持っていたか。私は「チベットの薬草処方をまとめた豪華図録」ってのが見てみたい。ウィリアムモリスの本も、そりゃ欲しくなるよね。 しかしながら羊皮紙で出来た、カリグラフィと細密画たっぷりの古い本って、美しくて魅力的だけど(私も昔欲しいと思ったけど)、なんか宿っていそうじゃないですか?牛の血を固めてできた表紙の祈祷書とか、怪しげな人形とか、そんなのがみっちり詰まった部屋に寝起きしてたら、そりゃ具合も悪くなりますって。 大量の蒐集本と20年分のイラストを、展示即売会を開いて売って処分したところが、著者のいうところの「捨て暮らし」のピークのようだ。しかしながら、捨てが終わったと言いながら、元配偶者のところにまだ残してあるものがある、というのは理解不能。 まあそんなわけで、 読んでいるとどんどん自分が狭いウサギ小屋に住む哀れな半病人に思えてくる(・・・はっ!書いて気がついた。これって事実なのか?まったく気づいてなかった・・・)ところがなんだかなあであったが、収穫もあった。 モノを減らして、生き物が飼いたくなったんだそうだ。 そこで白ヤギさんなのね! うれしい。そうすぐには食べちゃわないよね。 きっとヤギ乳を採るのでしょう。 楽しみだ。