「鑑定士と顔のない依頼人」
名誉も地位も築き上げた、超一流の鑑定士にしてオークショニアが主人公。
若い女性からの鑑定の依頼を受けて出向くも、
彼女はなんやかんやと理由をつけて姿を現さない。
腹を立てつつも屋敷に通ううちに興味を持ち、
ついに隠れて彼女の姿を見て、その美しさの虜になってしまう。
彼女は広場恐怖で他人と会うのが怖くて外に出られず、
ずっと自室に閉じこもっているのだと話す。
一方、屋敷の中で彼は機械の歯車のような部品を見つける。
親しい機械系の修理工のところに持ち込んでみると、
それは17世紀頃のオートマタの部品なのではないかと言う。
屋敷に行くたびに部品を拾って持ち込むが、
それはどのようなものなのか。
そして、彼女を外に連れ出すことはできるのか。
・・・といったような映画。
ーーー
はじめの方で出てくる一流レストランと鑑定士の自宅、
ずらーっと吊されたスーツと、整然と並んだ手袋の棚が、
うっとりするほど美しいです。
本当に美しいものを見たいという彼の審美眼をあらわしているのでしょう。
選りすぐりの名画ばかり、女性の肖像画を大量に収集していて、
隠し部屋の壁一面に掛けてあるのが壮観。
独身の彼にとっては、彼女たちが恋人だった。
しかし、生身の若い女以上に美しいものが、この世にあるだろうか。
なんか変だな、奇妙だな、と、最初に感じたところは、
だいたい当たりでした。感覚って大事ね。
ーーー
あんまりだ、かわいそうすぎる、と思う。
だけど一生、この世で最も美しく価値のあるものと縁のないまま
終えるよりはよいのだろうか。
自分だったら?
知らないままの方がいい。
とても悲しいお話でした。
- 出版社/メーカー: Happinet(SB)(D)
- メディア: Blu-ray