ぼちぼちおうち生活

浅く薄く移ろいゆく趣味と住居の覚え書き。

「空中庭園」

かなり前から観ようと思っていた映画だけど、心身共にコンディションの良いときでないと耐えられないかもしれないと思って、ずっと先延ばしにしてきた。予想よりも遙かにグロいシーンが多々あって途中で脱落しそうになった。ホラーは見ない方針なので(しまったなあ)と内心思ったけどなんとかゴールまで。とてつもなく怖い。

でも共感するセリフの多い、すごく印象に残る映画でした。

冒頭のナレーションで

「何事も包み隠さず、タブーを作らず、できるだけ全てのことを分かち合う。

 それが、私たち家族の決まり。」

と語られる。

主人公は4人家族で広いルーフバルコニーのあるマンションに住む主婦の絵里子(小泉今日子)。

いつも穏やかな微笑みを浮かべて明るくふるまい、理想の家庭を作り上げようと努力していて、

傍目にはとても幸せそうに見える。

しかし、家族は隠し事をしないというルールの陰でそれぞれに秘密を持っていた。

夫には浮気相手が2人いる。

高校生の娘は授業をさぼったあげくに見知らぬ男とラブホテルへ。

そして中学生の息子は父親の浮気相手を家庭教師として家に連れてくる。

だけど実はそのルールを作った絵里子自身にも、

秘密と、触れられたくない過去があった。

空中庭園 通常版 [DVD]

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私は、(絵里子えらいなあ。がんばってるなあ)と思って観た。

すごくちゃんとした朝食を作り、いつも身綺麗にして、

家族の誕生日にはごちそうを作って部屋には飾り付け。

肺ガンの実母の見舞いに行き、お蕎麦屋さんでパートをして働き、

バルコニーには本格的なガーデニング

いつも穏やかな微笑みを欠かさない。

高校生の時から自分の夢に向かって全力で努力して、手に入れたのだ。

仲の良い家族を演じている様子を、

「学芸会じゃないの」、と言われて絵里子が言い返す。

「そうよ。それの何が悪いの。いいじゃないの、楽しくて。」

まったくもって同感だ。

その学芸会を開くためにどれだけの準備がいると思って?

絵里子の実母との過去や葛藤と、心の中で書き換えられていく過去。

兄の誕生日は祝っていたのに自分は祝ってもらってない、と絵里子は思っているけど、

母親は、みんな平等に誰の誕生会もやってないわよ、と言う。

終盤になって登場する絵里子の兄の話が、絵里子の思い込みを溶かすところが

この映画のひとつのクライマックスだと思いました。

おそらく賛否両論ある映画だと思いますが、

自分の家庭を守りながら実母との葛藤のある人は

一度観てみるといいかもしれません。

この映画の原作は角田光代という人が書いた小説らしいのですが、

この人は「八日目の蝉」という作品も書いていて、

聞くところによると(母性とはなにか)というテーマなのだとか。

繰り返し書きたいテーマなのかもしれませんね。

とても印象に残る映画だったのですが、

あまりに怖くてトラウマになりそうなので、

見返す気にはなりません。

小泉今日子すばらしい。

あと、ルーフバルコニーの庭園がちゃんと造られてて良かった。