ぼちぼちおうち生活

浅く薄く移ろいゆく趣味と住居の覚え書き。

「誰も守ってくれない」

この映画の前に起きたこととして、

テレビドラマで「誰も守れない」がある。

そっちはリアルタイムで観た。

初めからこの映画を観るつもりだったんだけど

遅くなってしまった。

なのでほとんど忘れてしまっていて、

せっかくドラマに出ていた美人の「先生」(精神科医)が

出てきたのに、(コレ誰だっけ??)と思ってしまった。

よーく記憶をさぐると・・・前にひどい中傷をされて保護してた人だっけ?

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世間を騒がせた殺人事件の犯人が逮捕された。

報道が過熱しているため、容疑者の家族の身の安全を

警察が守ることになった。対象は、犯人の父と母と妹。

自宅にドヤドヤと警察官や家庭裁判所の職員など

大勢の人間が入り込み、慌ただしく説明と手続きが進む。

父と母は立て続けに離婚届と婚姻届を書いて

一家そろって母親の旧姓に名前を変え、

中学生の妹は就学を免除され、家宅捜索が始まり、

全員が分散してホテルでの事情聴取へ向かう。

暴力的に群がるマスコミの取材、

移動の車をマスコミの車が執拗に追ってくる・・・。

移動した先のホテルの部屋にまでマスコミが押しかけてきて、

妹と刑事はまた移動することになり、またその先にも。

そして行き着いたのは都心を離れた海辺のペンションだった。

しかしネット上での顔写真や住所などの晒しあげは加熱する一方で

なぜか潜伏先のペンションの場所までも書き込まれることに。

無言でケータイのレンズを向ける人たち。

「いつまで続くの?私、何も悪いことしてない。」

なのに加害者の家族だというだけで世間から

過酷なまでに非難と好奇の目が向けられる・・・。

・・・・・といった内容の映画。

テンポ良く、最後までひきつけられました。

実際にこんな方法をとることもあるのかもしれないな、

などと思いながら観ました。

ただ、「家族は大切に」「家族なんだから」と、ことさらに

何度も繰り返されて、さらに連帯責任を強調されても

ちょっと息苦しいなあと思いました。

妹役の志田未来ちゃんが、さすがです。

なんだか知らないけどこの子がいると目が離せなくなるんだよね。

作品全体が面白くなるというか。

北島マヤってこんな感じじゃないかとさえ思います。

(褒めてるんだよ!決してパッと見たかんじ普通とかいうわけじゃ・・・)

15才の女の子を保護するんなら、

女性の警官をつけるのでは、とか、

最近のテレビ局はもうちょっと自重してるよね、とか

ちょこちょこ思うところはあっても、気になりませんでした。

映画としてよくできてると思います。

全部見終わってから、ふと思ったんだけど、

この子は兄がお風呂場で血のついた手を洗ってるのを見て、

異変を察知して部屋に戻って目をとじたけれども、

そのあとは忘れて、屈託の無い無邪気に楽しい学校生活を送ってたんだなあ、と。

突然兄が逮捕されて、突然先生から呼ばれて、

楽しい日常が突然、理不尽に断ち切られたように冒頭で描かれてるけど、

近所でそんな事件が起きて、同じ日に兄は血だらけの手を洗ってて、

ひょっとして、と思わないわけがないんじゃなかろうか・・・。

潜伏先のペンションが、海のすぐ近くに建っていて、

いいかんじだなあと思いました。

エンドロールをみると、西伊豆のようですね。

行ってみたくなりました。

昔、ゴシップ系週刊誌から、

間違い取材電話がかかってきたことがある。

「ご長男はご在宅でしょうか」

と言われ、兄のことかと思って応対したら、

どうも話がよくわからない。

すごく嫌な口調だった。

どうしてこんなに悪意のある話し方をされるのだろうと思った。

話すうちに、どうやら殺人事件の加害者の家に、

事件から×年加害者は今どうしてる、といったような

企画の記事を書くための電話だとわかってきた。

しかし、人違いだと言っても分かってもらえず、

切ってもすぐにヘラヘラ嘲けるような口調で

「お~っと切らないでくださいよ~」って言ってかけ直してきた。

話しているのはどうも母親ではないらしい、と思った相手に、

ところであなたはご長男とはどういうご関係で?

と聞かれ、

「妹です」

と答えた瞬間に相手が電話の向こうで受話器をはずして

「おい! 妹がいるってよ!」

と叫んだのが今でも忘れられない。

こんなに馬鹿にした失礼な電話をされて、まったくの無関係なのに。

と思った瞬間に、

(では、本物のそういう立場の妹がいたとして、

 その人はそういう扱いをされても仕方ないのか?)

(見ず知らずの相手に居丈高にふるまうその根拠は何だ?)

と頭に浮かんだ。

この映画はだから観なければいけないと思っていた。

少しだけ、向こう側の論理が分かったような気がする。