「運命じゃない人」
主人公は「宮田」という地味なサラリーマン。
演じるのはNHK朝の連ドラ「ゲゲゲの女房」で二階の下宿人をしてた
中村靖日という役者さん。
顔を見ると誰もが、「あ~、この人か」と思う俳優さんです。
最初に登場するのは家を出て行く女性。
大荷物をかかえてドアの鍵を閉めて、そのままその鍵を玄関ドアの新聞入れから中に落とす。
婚約指輪を質に入れたら、たったの3500円にしかならなかった。
飲食店に入り、これから一人で生きていくんだ、と涙をこらえてコーヒーを飲んでいて、
こらえきれず涙がこぼれそうになったところで、近くに座っている男性に、
「ひとり?」
と声をかけられる。そちらは男性2人組。
「待ち合わせか何かかな。良かったら一緒にごはん食べない?・・・やだったら全然いいんだけど、なんか、大勢で食べた方がおいしいでしょう、ごはんは。」
席を移り、気を紛らわせようと快活にふるまう彼女だが、
声をかけてきた方の男が席をたち、おとなしそうなまじめそうな男(宮田)とふたり残され、
静かになったところでまた涙が出てきてしまう。
まじめで優しい宮田は、一緒に暮らしていた女性が半年前に出て行って、
まだ気持ちが残ったままだ。マンションに荷物も残っている。
ここから大荷物の女性と宮田と、ほのかにいい雰囲気になっていって、
それがなんともいいかんじです。
新しい出会い、静かな恋のはじまりを感じさせて、
いいなあ~~というかんじなんです。
しかし。
この映画はそれだけの映画じゃなかった。
そのあと、暖かく微笑ましい風景のウラで進行している
別の物語が描き出されるのです。
大荷物の女性に声をかけた友人はなぜ席を立ったまま帰ってこないのか。
「仕事中だから」
と話す友人はどんな仕事の途中で抜けてきたのか。
今度は友人を中心にして、同じ時間が描かれるのです。
同じ時間の、まったく別の世界。
伏線効きまくりです!
- 出版社/メーカー: エイベックス・マーケティング・コミュニケーションズ
- メディア: DVD
いやもう、見事にパズルが組み合わさっていくような、細やかな仕掛け。
台詞まわしといい、つじつまの合い方といい、いやホントにうならされます。
どの登場人物の気持ちもなんか分かるかんじがして無理がないし、
ラストの終わり方も良い!!
誰一人としておろそかにされてないんです。
しかもよく考えると、みんなちゃんとうまくいって、めでたしめでたし。
いやー、すばらしい。
すごく面白かったです。
こういう掘り出し物があるから映画鑑賞は止められない。
これいったい幾らで作ったんでしょう。
映画は役者の知名度でもなければ予算でもない。
才能のある人っているんだなあ。
「キサラギ」が好きな人ならたぶんこれも好き。
強くオススメしたいです。