ぼちぼちおうち生活

浅く薄く移ろいゆく趣味と住居の覚え書き。

間違い電話 その1

もうずいぶん前の話だ。

子供が生まれて1年ほど経った頃に住み始めた家でのことだ。

当時はナンバーディスプレイや番号非通知でかかってくる電話を拒否する機能なども無かったため、怪しいセールスの電話や無言電話なども多かった。まだ携帯電話はそれほど普及してなかった。

住み始めて間もない頃から、やたら間違い電話が多いのだ。

番号の押し間違いかな、と思って切ったら続けて同じ人から電話がかかってくることも多く、何番におかけですか?などと確認すると、押し間違いじゃなくてデータ自体がそうなってたりする。どうやら単純な間違い電話というよりも、別の人の電話番号として知られた番号をウチで使い始めたということらしい。

(前にその番号を使っていた人は、電話番号が変わったことを周知しないで引っ越してしまったんだろうか?)

(前の人からウチが引き継ぐまでの間が無かったのかな?)

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あんまり何件もかかってくるものだから、名前を覚えてしまった。

前の持ち主は、シノハラさんというらしい。

「シノハラ先生のお宅でしょうか」、と言う人もいる。

先生ってことは、学校の先生なのだろうか?

じゃあかけてくるのはその人の生徒さんたちなんだろうか。

今の電話番号を知らないんだから卒業生なのかな?

それにしても、ずいぶん卒業生から慕われている先生のようだ。

先生というのはそんなに自宅に電話があるものなのか。

学校の先生だとしたらそれは中学校なんだろうか、高校なのか、

はたまたもっと違う学校の先生なのか・・・・。

平日の昼間にもかかってくるということは定年退職なさったのかな。

ふむ。

定年退職されて、同窓会でも企画している卒業生から電話がかかる、

でも在職中に住んでいた家からはお引っ越しされていて連絡がつかない、

そういう状態なんだろうか。

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しかしその後、

ちょっと気になる言い回しの電話がかかってきた。

「そちらにシノハラ先生はいらっしゃいますか」

である。

最初の頃の間違い電話は「シノハラさんのお宅でしょうか」だった。

そのうち「シノハラ先生はいらっしゃいますか」が増えた。

いったいこれはどういうことだろう?

まるで我が家にシノハラ先生がいるようではないか。

さらに、こちらはちゃんと名乗っているのに

「シノハラ先生お願いします」と言われ、

こちらにそういう方はいらっしゃいませんよと答えたら、

「連絡先をご存じないですか」

という人まで現れた。

なんなんだそれは。

かつての同僚なんですが、と言われても、

知らないものは知らないというかこっちは会ったこともないというか、

それは他の同僚の方にあたってもらうしかないでしょう。

いったいシノハラさんとはどんな人なんだろう。

電話してくる人たちの用件は何だろう。

もはやこうなってくると、単に市外に引っ越したというよりも

行方をくらませたというニオイさえしてくる。

ついには、

「電話口に出してください」

という人まで現れた。

だーかーらー、そういう人は居ないっちゅーに。

そうしたら

「どうしても大事な用があるんです。」

「そちらに戻ることがあれば連絡を。」

と食い下がられて、

いやだからその人全く知らないし、

まるで愛人がかくまってるみたいな言い方されても。

そうしたらその人は姉だと名乗った。

お姉さんが知らないのに、分かるわけないじゃないですか・・・・。

その電話をどうやって終わらせたのかは覚えていない。

たしかその電話を最後に、シノハラ先生あての電話はなくなったように思う。

その人は本当にお姉さんなんだろうか。

お姉さんにも連絡しない事情があるのか、

それとも姉だと言えば教えるだろうと思ったのか。

謎である。