ぼちぼちおうち生活

浅く薄く移ろいゆく趣味と住居の覚え書き。

「レミーのおいしいレストラン」

主人公は食べ物の味にこだわりのあるグルメなネズミ。

老婦人の住む田舎の家に大家族で暮らしていたのだが、レミーは父親のいいつけに背いてこっそりダイニングにしのびこみ、テレビや料理本を見ては料理をすることを夢見て過ごしていた。そんなある日、ついに老婦人に見つかって、命からがら家族全員で逃げることに。家族からはぐれて下水の流れにのって、たどりついたのはあこがれの美食の街、パリだった。

 

パリでレミーはあこがれのレストランの厨房に入り込み、そこで心優しくてドジな新入りの青年、リングイニと出会う。

レミーはリングイニのコック帽の中に隠れて髪をひっぱって、まるでヒト型巨大ロボット(ガンダムとか)を操縦するように操って、素晴らしい味の料理を作り出すのだった。その料理はすごい評判に。しかし、絶対に見つかってはいけないのだ・・・・

・・・・というところまでが前半のあらすじ。

 

 

ディズニーはこれまでいろんな生き物を擬人化してきましたよね。ダンボ、わんわん物語、101匹わんちゃん、ファインディング・ニモ・・・。たぶんこれまでで一番、可愛くない主人公なのでは。いや一匹だけで見てると可愛いんだけど、うーん。

 

ミッキーマウスはアイドルなのに、同じネズミなのにこの違いは何?と思ったら、あちらはマウス、こっちはラットなのでしょう。日本語ではどっちもネズミなのに、全然イメージが違うようです。

まあ日本でもハムスターとネズミじゃずいぶんイメージ違うもんねえ。

 

表情豊かな動きとか、こまやかさとか、景色や料理の美しさはさすがのクオリティです。パリの夜景ってあんなかんじなのかな。

 

 

この映画が伝えたいことはこの二つ。

「誰にでも料理はできる」

「盗んではいけない」

 

くりかえし、何度もでてくるこの言葉。

誰にでも料理はできる。年齢も性別も、出自も関係なく、美味しい料理さえ作れたら賛辞が得られる。厨房ではいろんな経歴の人が働いている。

 

盗んではいけない。

たとえ親兄弟がおなかを空かしていても、勤務先の食材庫の中の食べ物に手をつけてはいけない。ましてや勤務先に親兄弟が盗みに入る手引きをしてはいけない。

 

 

最後の方で偏屈な料理評論家が語るモノローグを聞いて、制作者たちがこのメッセージを伝えたい相手、この映画を見せたい相手が浮かんできました。

世界には最下層の暮らしをして将来の展望も持てない少年たちがいる。たとえばパリなら移民やロマの人たち・・・・。

 

「誰にでも料理はできる」

「盗んではいけない」

 

学校に行っていなくても、テレビでアニメ映画を放映していたらそんな子供たちが見るかもしれない。まっとうな生活に脱出するためのメッセージなんだろうなと。そういえば「アラジン」の主人公は、ストリートラットって呼ばれてましたね。

 

でも・・・・・

日本では、どこかで働き始める時の注意事項に盗んではいけない、とはちょっと考えつきませんよね。遅刻するな、とか、挨拶はハキハキと、とか、そういうのならわかるけど・・・・。

 

ネズミや人物の造形といい、主人公の家族関係といい、これはヨーロッパ向けに作られたアニメなんだなあ、と、異文化を強く感じて、なんだか考えさせられました。このごろ企業ではグローバル化なんてことが良く言われているらしいけど、本当にやろうとしたら生半可なこっちゃないなあ、なんてことも思いました。