ぼちぼちおうち生活

浅く薄く移ろいゆく趣味と住居の覚え書き。

ずっとその町で

ニュースや新聞のインタビューで見かけるたび、

こういう人生が可能な人もいるんだなあと思う。

「生まれてからずっとこの町に住んでる、ほかの土地に行ったことがない」

と話す70代後半の女性。

小学校の頃からずっと同じクラスだった幼なじみと結婚して、

(周りはみんな古くからの知り合いだから)知らない人と話したことがない、

と話す40代女性。

親の代からずっとワカメの養殖をしていて、

毎日この美しい海を見ながら穏やかに暮らしてきた、

ここは本当に良いところだ、と話す男性。

私は小学校の時に親の転勤で関西から関東に来て、

結婚してからもダンナの全国転勤についてまわってきた。

前回の転勤は、内示の出たのが2週間前だった。

娘は小学校を3校通い、中学校はまた次の場所で、

今住んでいる家は15才にして5つめである。

正直きついけど、仕事のあるところに引っ越すのは

暮らしていくために仕方のないことだと思ってきた。

娘には本当に苦労させたと思う。

小学校の高学年にもなると子供のために単身赴任を選ぶ家も多いなか、

うちはずっとダンナの辞令と共に家族で動いてきた。

小学校の社会の授業では「ふるさとはどこ?」と先生に聞かれ、

立たされたまま答えられずに黙ってしまい、

「じゃあ、生まれた場所は?」と聞かれて

「東京です」と答えたら、

「うーん、そうじゃなくってー、」

と言われてしまったそうだ。

自然のゆたかな土地で、慣れ親しんだ町の住みなれた家で、

よく知っている人たちに囲まれて穏やかに暮らす。

そんな恵まれた人生をおくる人たちっているんだな、

と思って、娘に、

「生まれてからずっと同じ町に住んでる、だって。70代後半女性。

 すごいよね。いいな~。」

と新聞を読みながら話しかけた。

そうしたら娘は、

「そんなの絶対ヤダ!」

と言うのだ。

えっ?と意外に思ってなぜかと聞くと、

「だって、たとえば最初の小学校の時の家にずーーーっと住んだとしたら、

 M小の××にも会えなかったし、金管やってあんないいステージで

 演奏させてもらうことなんてなかったし、あんなにいい中学校にだって

 行けなかったし、AにもLにもRにも会えなかったし、

 あの家じゃ今みたいに気楽に美術館に行ったりできないよ。

 北斗星にも乗れたし。

 いろんな街に住めるのもいいじゃん。

 ちょっと旅行に行ったくらいじゃその土地のことは分からないよ。」

・・・・・・・・。

娘は3校目の小学校で相当苦労したはずなんだけど、

それを入れてもそう思うのか。

親の都合で振り回してちょっと申し訳ないと思ってるんだけど、

でも、たしかに、いろんな経験はできた。

新しい土地では新しい出会いがあり、

その場所なりの良いところがある。

だから、子供の転校で不安に思っている親御さんには言ってあげたい。

わるいことばっかりじゃないですよ。

新しい場所では、前のところではできない経験ができるような何かが

待ってるかもしれないし、そこですごく気のあう友達ができるかもしれないです・・・。

ただ、私自身はもう少しここに住みたい。

今の家はもう4年目になるからいつ辞令が出ても不思議はないんだけど、

高校の転校は難しいので、卒業まではこのあたりに住みたいと思っている。

最終的にどこに落ち着くかはまだ分からない。