ぼちぼちおうち生活

浅く薄く移ろいゆく趣味と住居の覚え書き。

「砂の女」

安部公房の「砂の女」。 すごく有名な小説ですけど未読でした。 ちょうど、ものすごく風の強い日に読んだんです。 風のビュービュー吹く音を聞きながら読んだらもう怖いのなんのって。 ずっと昔この小説の紹介で、 妖艶な女が蟻地獄の底にひそんで男を捕らえる幻想的な話、 というのをどこかで読んだ気がするのですが、 そういう話かと思って読み進めたら、 思ってたのと全然違った。 映画が作られてるらしいので、映画版の評だったのかも。 ーーーーーーーーーーーー 都会からやってきた主人公の男が囚われる。 土地の老人に騙されて、脱出不可能な家で 逃げられない状況になるのです。 苛烈な自然環境での貧しい暮らしと、 田舎の小さな町での閉ざされた慣習と、 苦しい生活に耐えるしかない素朴で哀れな女と、 腐りそうな倒壊しそうな木造の家。 男は何とか逃げようと策をめぐらす。 はたして男はそこから逃げることができるのか。
砂の女 (新潮文庫)

砂の女 (新潮文庫)

  • 作者: 安部 公房
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2003/03
  • メディア: 文庫
日々積もる砂をスコップで毎日掘らないといけないとか、 砂が吹き荒れて前がよく見えないような描写には 札幌(前の前の前の家)での雪を思い出しました。 その日を生きていくのが精一杯で、 そこから逃げ出すためのお金もエネルギーも無い、 という「女」の状況には説得力がありました。 で。 主人公の男が逃げ出せるのかどうかが問題なんだけど、 なぜ主人公は自信満々に助けてもらえると思ってるのかなと 途中でハラハラしてしまいました。 だって最初から失踪させるつもりなんですよ。 一生砂を掘らせる奴隷にするんだから、 死んでしまえばそのまま砂に埋めてしまえばいいじゃないですか。 女の死んだ夫と子供は埋まったままなんでしょう? インテリ面して無駄なあがきを続ける男と、 その間も黙々と生きていくための労働を続ける女。 こういう場所では腕力と体力と地縁が大事ですよね。 ーーーーーーー この小説を学生時代に読まなくて良かった。 若いときに読んでいたら、 労働に対する認識が悪い方に変わったかもしれない。 定年後は温暖で暮らしやすく、 そこそこ都会な場所に住みたいな。