ぼちぼちおうち生活

浅く薄く移ろいゆく趣味と住居の覚え書き。

禁句になった

この時期、気にかかっていることは人によって違うと思う。

津波の被害があった地域の復興状況が気になる人、

被災地で家族を亡くされた方の痛みに心を寄せる人、

今後の日本経済の先行きが気になる人、

もしかしたらまた大きな地震がおこるのではないかと心配な人。

私はどれも気にかかるけど、

一番気になっているのは福島の放射性物質のことだ。

チェルノブイリでは立ち入り禁止区域になっている濃度のところに、

日本ではまだ人が大勢住んでいる。

また別の地域では、

放射線の数値はその地域が「放射線管理区域」であることを示しているのに、

成人男性が長時間働いているどころの話ではなく、

妊産婦や子供がその中で暮らしているらしい。

今も被爆線量がつみかさなっているかと思うと、

いたたまれない気持ちになってくる。

なんとかならないものかと思う。

でもその話題を家で話すと、ダンナが怒りだすのだ。私に。

怒りの矛先は東電でもなく行政でもない。

ダンナのふるさとは福島県である。

福島の悪口を言っているように感じるらしい。

そういうわけで、

家の中で原発関係の話題は一切禁止になった。

放射線管理区域」とか「避難区域」とか「放射線の値」とか、

そういう関連用語はぜんぶ禁句。

それらの言葉は口に出してはいけない。

ダンナの実家は内陸の方なので、津波の被害もなく放射線もさほど高くない。

私なんかは放射線の値の高い地域からみんなそっちに引っ越してくればいいのに、

くらいに思っているんだけど、そもそも、放射線の値が高い地域がある、

ということ自体を、認めたくないようなのだ。

考えたくもないらしい。

「その家の事情っていうのがあるからよそからああだこうだ言うな」

放射線管理区域の話は、あれはウソだって、なんともないって」

「福島は福島でやってるから考えなくていい」

と言う。

幼い子供と奥さんだけ避難させて現地で働くダンナさんもいれば、

仕事で動けない俺を置いておまえたちだけ遠くに逃げるっていうのか、と怒るダンナさん、

子供の健康が心配だけど舅姑が見知らぬ土地になど行きたくないというから

このままここで家事をしなければならないというお母さんもいるだろう。

その家にはその家の事情というのがある。

ただ、

考えたくもない→その話題はもう聞きたくない→(その結果、知識も情報も入らない)

という気配を感じなくもないし、

テレビではその数値が何を表しているか説明もないし、安全ですとしか言わないから、

なぜ突然、地震から2ヶ月近くもたって避難しろと言われるのか理解できない、

だってあんなに安全だと言っていたじゃないか、と言う人たちの主張もむべなるかな。

パニックを防ぎたいというのは分かるけど、

将来、癌や白血病の人がその地域から大勢出ることになったら、

どうして危険性を周知してくれなかったのかと思うんじゃなかろうか。

知らせるだけで何もしてくれないのなら最初から教えてくれなくていい、

という人もいるだろうけど、状況判断の手がかりはあった方が良いと思う。

何にしても気が重い。

結局、行き着く結論は、

自分ではどうにもできないことを考えるより、

自分のことをちゃんとやった方がいいんだろう、ということ。

でも気になるのよ。