ぼちぼちおうち生活

浅く薄く移ろいゆく趣味と住居の覚え書き。

勇者の名

娘の最初の転校は小学校3年生の時だった。

転校初日、もう1人転校してきた子がいて、

とまどっている娘にたくさん話しをしてくれたのだそうだ。

彼は転校回数が多く、まだ3年生にもかかわらず既に3校目。

小学校のうちに4校目を経験することはほぼ確実だとのことだった。

学校によってけっこう違うんだぜ。

1校目はA県のどこそこでこんな学校でこういう先生で、

2校目はB県に行ってあんなことがあってこんなことがあって、

3校目がここなんだ。

A小学校の時はAっていうやりかたでやってたけど、

Bっていうとこではぜんっぜんやりかたが違ってすげえ困ったけど慣れた、

ここは何年生までいるか分からない、

・・・等々の内容をバリバリにしゃべりまくった後に、

彼はこう言ったそうだ。

オレ、学校によって自分のキャラ替えようと思ってるんだ。

転校する時は、次の学校ではどんなキャラでいこうかって考える。

オレね、今度の学校では無口なキャラになるって決めたんだ。

その小学校は転校してきた子の割合がとても多くて出入りも激しかった。

転校の苦労や不安を経験してきた子が多いため、回数の多い彼は

幾多の冒険を乗り越えてきた勇者として一目置かれることになった。

娘はそれを見て(転校回数が多いのはカッコイイ)と思うようになったようだ。

ちなみに、ぜんぜん無口にはならなかったらしい。

その勇者の名が、ヤマキくん。

ギターのヘッドにyamaki というロゴが書かれているのを見て、

真っ先に思い浮かんだのがその彼のことだった。

ホールの周りはピックでついたと思われる傷がいっぱいで、

ヘッドの横にはなんだか知らないけど釘の跡がついている。

サイドバックがローズウッド合板で出来たボディは薄くて、

ふわっと広がるというよりは、パリッとした音が出てる気がする。

それが、活発で少しそそっかしくていつもどこかにバンドエイドが

張ってあって(包帯だったこともあるらしい)口数の多い少年の

イメージを思い出させて、こっそりヤマキくんと呼ぶことに。

いえ、ロゴが書いてあるからそのままなんですけど。

幾多の困難を乗り越えてきた勇者の名がヘッドに書いてある。

ちょっと気に入ってます。