ぼちぼちおうち生活

浅く薄く移ろいゆく趣味と住居の覚え書き。

公立中学もいいよ

少し前に、書店に娘の参考書を買いに行ったことがあった。

いっぱい並んでいて訳がわからなくて買えないというので、

「じゃあママが勝手に選んで買っちゃっていい?」

「いいよ。」

という流れだった。

平日の昼間、

めったに行かないコーナーなので棚の前でうろうろ迷っていたら、

同じ棚を熱心に見ている同年代の女性がいる。

絶対、同じくらいの子供を持つ母親に違いないと思って、

すいません、ちょっと教えて欲しいんですけど・・・・

と言って話しかけた。

「数検の、なにか参考書か問題集を探してるんですけど、

 この棚の他に置いてありそうな場所ってありますかね?」

「参考書っていえばここですけど・・・スウケンって何ですか?」

「数学検定です。英検があって、漢字検定があって、数学検定。」

「聞いたこと無い・・・。お子さん何年生ですか?」

そんな感じで会話が始まった。

本屋で立ちっぱなしでひそひそ長時間の情報交換会だ。

そのお母さんの話は私にとってちょっとカルチャーショックだった。

そのお母さんのお子さんは私立の中高一貫校に通っているという。

数学が苦手科目なのだそうだ。

第一希望に受かったといって浮かれていたら、中一の時点で

成績が下位になってあせっている。(お母さんが)

「え~、成績なんてどんどん入れ替わるから、これからですよー」

と言ったら、

中間層はどんどん入れ替わるけど、最上位と下位の方はなかなか。

固定しちゃって。それに、上位の方は補習が受けられるけど、

成績の足りない子は受けられないのよ。

うちはギリギリ第一希望に受かって喜んでたけど、

よく考えたら、希望の学校に落ちてここにくる子もいるんだものね。

他のお母さんたちとお茶してたら成績上位の子のお母さんが、

試しに開成の問題をやらせてみたら解けたわよ、

開成の問題は素直だからそんなに難しくない、なんて言ってて。

そんな子もいるんだものね。

とのこと。

しかもその出来る子向けの補習は有料なんだそうだ。

で、どうも話の感じだと、成績下位の子の補習はないらしい。

そのままずーっと上がらないとどうなるかというと、

中三になった段階で呼び出されて、やんわりと転校を奨められるそうな。

うーん・・・・。

私立は指導がきめ細かくて、その子に合わせた教育が受けられるって聞いてたけど、そうじゃないのか。

私立の中高一貫校では公立中学よりも質の高い授業が行われていて、成績上位の子はもっと伸ばして、遅れ気味の子には手厚いサポートが受けられるというのが、なかば常識のように語られているのだが。

開成に行けるような優秀な子がいる、って、居ないことが前提だったというのも盲点だった。

娘の通う公立中学からは毎年、開成や慶応や日比谷や西などに合格する生徒が一定数いるけれども、私立中学は入るときに振り分けられてるから、いないところには基本的にいないのだ。

しかも、一クラスの人数が40人を超えていて、教室は満員だそうだ。

学校までは1時間以上かかって、朝は毎日おべんとうを作らなきゃいけない。

お昼は食堂があってラーメンとか食べることができるけど、

上級生の先輩たちに気兼ねするから一年生のうちはとても行けない。

部活のあと、家に帰るまでお腹が空いてもたないから毎日マックかコンビニに寄って、

その出費がちりも積もればで意外に膨らむのだそうだ。

娘のクラスは35人くらい(途中で転校してくる生徒がいるので少しずつ増える)、

学校までは徒歩で15分前後、

お昼は毎日栄養バランスを考えた給食が格安で出る。

メニューを紹介すると、

月曜 : チャーハン・わかめスープ・杏仁豆腐

火曜 : スパゲティクリームソース・小松菜サラダ・冷凍パイン

水曜 : わかめご飯・肉じゃがうま煮・ゆかり和え

木曜 : ミルクパン・鶏肉のマリナード焼・コーンポテト・卵スープ

といった具合である。

和洋中(たまにエスニック)がローテーションで出され、

温かいものは温かく、冷たいものは冷たいそうだ。

私はとてもこんなにバラエティに富んだ内容で毎日お弁当を作る自信がない。

あっという間にワンパターンになるし、蒸し暑い時期に通学時間1時間以上で

大丈夫な内容となると毎日本当に悩んでしまうだろう。

ちなみに、英語と数学は少人数クラスで、

一クラスが16~20人くらい。

英語はクラスを半分に分けて、半分は文法が得意な先生、もう半分は話す聞くが得意な先生に教わって、学期の途中で先生がクラスを交代する。

数学は得意な人と苦手な人に分かれて、得意なクラスではさらに小テストの順位で席を決めるということをやっている。得意なクラスでは演習と応用問題に時間を使い、基礎クラスではじっくりと順を追って丁寧に進めている。

理科の実験は2~3人で一組という密度の濃さだ。

教室は冷暖房完備。

学校全体の人数が少ないので先生はほぼ全校生徒の名前と顔を覚えており、

全校集会をしている最中に態度の悪い生徒がいると、壇上から学年+クラス+フルネームで名指しで注意を受けるそうだ。

授業で分からないことがあれば、先生に聞きにいけば丁寧に教えてくれる。

これで、授業料タダ。

入学金も無し。

英語検定漢字検定も数学検定も、学校で申し込んで、学校で受けさせてもらえる。

本屋で聞いたその中高一貫校では、いつまでに何級を取りなさい、という指定だけされて、

英検も漢検も外で取って証明書を学校に持って行くのだそうだ。

外で取るって、どこで取るんですか?って聞いたら、たいてい塾で取らせるからそこで取るとのこと。

ってことは、塾にも行かなくちゃいけないってことだよね。

授業がしっかりしている私立中学に通わせるか、公立中学に通わせて塾にいかせるか、という二択をよく見かけるんだけど、私立中学に通っても結局塾に行かせるのが前提なのであれば、その二択は成立しないのでは。

今住んでいる地域では、私立中学を受験させるのが一般的のようだ。

通える範囲に私立中高一貫校がいくつもあって、私立では公立中学よりもきめ細かな教育が受けられると言われている。

うちは家族で動いてきた転勤族で、小学校6年の3月、卒業式間近の時期に転勤が決まって、中学校を選ぶ余地などなく、引っ越し先の教育委員会に指定された学校に入学させて、新しい制服を入学式に間に合わせるのが精一杯だった。

公立中学に比べていかに私立中高一貫が優れているか、という話を見聞きするたびに、娘には申し訳ないことをしたかなあ・・・と思っていたのだが、その書店で出会ったお母さんの話を聞いて、見ると聞くとは大違いというか、なんというか、塾と私立校による公立中学に対するネガティブキャンペーンなんじゃないかという気がしてきている。

私立だから公立だからというよりも、むしろ地域格差の方が大きいのではないだろうか。

考えてみれば、札幌でそのまま進むはずだった中学校でここまできめ細かく丁寧な指導がされているとは思えない。