ぼちぼちおうち生活

浅く薄く移ろいゆく趣味と住居の覚え書き。

「悪人」

モントリオール世界映画祭 最優秀女優賞受賞作品、

第34回日本アカデミー賞最優秀賞最多5部門受賞。

原作は既読ですごくいい小説で、いっぱい賞を取ってるのも知った上で、

こんなに期待を膨らませて観るってどうだろうと思ったんだけど、

その期待を上回る、上質な映画でした。

ある殺人事件をめぐる話です。

「出会い系」で出会った男と待ち合わせしているのに、

女友達といっしょに餃子を食べ、ビールを飲む若い女性。

友達には見栄をはってお金持ちの彼氏がいるみたいに話したけど、

実際はその彼には必死でアプローチ中。

出会い系の男を待ち合わせ場所で見つけて近づこうとしたら、

その手前にお金持ちの彼の高級外車を発見。

あわててお金持ちの彼に媚びを売り、出会い系の男をぞんざいに追い返し、

強引に外車に乗り込んだ。

そして、遺体で発見される。

出会い系の男は、一時間半、車を飛ばして会いに来ていた。

解体現場で働き、入退院をくりかえす祖父と祖母との3人暮らし。

両親は幼い頃離婚してその後母親に置き去りにされた。

祖父母の面倒をかいがいしくみる孝行息子である。

男が次に出会ったのは紳士量販店に勤める真面目な女性だった。

妹とアパートに暮らし、自転車で職場と往復するだけの日々。

警察から連絡があったことを知った男はその女性を連れて車を出す。

・・・・というところから始まる映画。

出てくる人たちの背景が分厚く描かれた、

心理描写に細やかな日本映画でした。

優一と逃げる深津絵里に惚れてしまう人はいっぱいいるでしょう。

それはそれは魅力的で、本当に「いい女」というのはこういう女性のことを言うのではないでしょうか。

賞をとったのは深津絵里だけど、

口の重い肉体労働者役を演じた妻夫木聡

酷薄なお坊ちゃん役を演じた岡田将生

ほか周囲を固めた俳優さんたちもみんな素晴らしい。

原作も素晴らしい。

脚本も素晴らしい。

あんたがあんなことさえしなければ、ずっと一緒に居れたよ、

と話すセリフが重いです。

悪人 スタンダード・エディション [DVD]

悪人 スタンダード・エディション [DVD]

  • 出版社/メーカー: 東宝
  • メディア: DVD

この映画を見て、制作者の人たちはそんなこと意図してないと思うけど、

地方でずっと同じ場所に住んで同じ地域で生きていくというのも

それはそれで鬱屈するものがあったりするのかなあと思いました。

すぐ近くの地元で就職できるなんて良いことだと思っていたんだけど。

都会だとか、華やかな生活だとか、

そういうものに憧れるかんじというのはこんな感じなのか、と

少し分かったような気がします。

ーーーーー

あと、

こんないい映画にこんな下らないコメントして申し訳ないんだけど、

一緒に逃げるとか、二人で逃避行とか、

昔ちょっとあこがれてたというか萌えシチュエーションだったんだけど、

いやーなんというか、もう体力とかエネルギーとか全然ムリだなと思った。

なんかすんません。