玄武岩
たしかあれは私が小学校の低学年の時だったと思う。
父に連れられて家族みんなで玄武洞というところに行った。
行く前に、父にどんなところなのかと訪ねたら、とにかく面白くて珍しくてすごいところなのだと楽しそうに語るのだ。私はどんなに楽しいところなのだろうと期待に胸躍らせてついていった。
細かいことはまるで覚えていないのだが、「着いたよ」と言われた場所は何もない岩場だった。
当時の私はそう思った。がっかり気味な私に、普段物静かな父が滔々と語るのだった。
ほら、どの石もみんな六角形をしてるだろ?この石はみんな玄武岩っていう名前の石で、溶岩が固まってできた石なんだ。溶岩が冷えるときにちょうど六角形の柱になって・・・(以下略。というか覚えてない。)と話してくれるのだが、ふーん、以上の興味は持てないままだった。
それ以外の時にも父から、この石は砂岩と言って砂粒がどうこう、とか、この白い小石は石英といってね、とか、小さい川の底でキラキラ光るのは雲母だとかいうマニアックな話しを聞いていて、母や兄や私にはどこが良いのかまったく分からない地味な色の不透明で磨かれてもいないタダの石を、これは××石だから、と持っていたりするのを見てきていて、どこが面白いんだろうと思っていた。こんなものが好きなのは父だけだと思っていた。
結婚して実家から離れて何年も経って、そんなことはすっかり忘れた頃にふと気づいたのだ。
自分が「石」を集めていることに。
最初に買ったのは小さな無色の水晶だったと思う。
それからブルーレースアゲートやローズクオーツなどの可愛らしい小さなタンブル。
少しずつ種類が増え、知名度の低いものにも目を向けるようになり、
ネビュラストーンを買ったところでふと、「これって、石だなあ」と。
いつの間にやらどの石が石英の仲間かを覚え、娘にむかって「スターローズクオーツに浮かぶ線が6本線なのは水晶の結晶が6角形に・・・」などと語っているのに気づいて唖然とするのだった。
うーん。DNAの不思議。
今回のブログを書くにあたって、記憶を確認するために「玄武洞」で検索してみた。
思っていたのとだいぶ違う場所にあった。
載っていた写真を見たら、玄武岩の石柱のうねりが壮大な、不思議な迫力のある場所だった。
面白い。なんで私はこの良さがわからなかったんだろうなあ。もったいない。
娘に見せたら「どこが面白いの?」と言われた。