ぼちぼちおうち生活

浅く薄く移ろいゆく趣味と住居の覚え書き。

夏にふさわしい話

もう、ずっと前の話です。

私の2つ目の勤め先は、とある城跡に建つ、

博物館の会計課でした。

建物の入り口には常に警備の人がいて、一般の人は入れません。

長期アルバイトという感じの身分だったのですが、

正職員より早く来て、机を拭いたりするんです。

その日はたまたま私が最初でした。

総務係の係長席をふいていたら、

開いたままの入り口から、

廊下をはさんで向かいにあるトイレに

スっと、友達のTさんが入るのが、ちらっと見えました。

Tさんの家は近いので、

「今日はTさん、おなかの調子が悪いのかな?」

と思いながら、そのまま机を拭いていると、

Tさんが、「おはよー」といって入って来ました。

緑のセーターを着てました。

「あれっ? Tさん、今日あかい服着てなかった?」

「ううん、なんで?」

「え、だって、さっきトイレに行ったの見えたんだけど、

 ちょっとえんじがかった赤いカーディガン肩に掛けてたでしょ?」

「いま来たばっかりだよ。人違いじゃないの?」

でも、あんな風に髪が長くて、ちょっと暗めの赤を着る人って

他にいないよねえ、と思いながら、

いったい誰だったんだろう?と気になって、

Tさんと、用事を作っては

髪がストレートのロング、赤のロングスカートに暗めの赤のカーディガンの人を探して、

庶務課、展示課、もぎりのお姉さん達、掃除の人達、

と、聞いて回ったのですが、

だれも該当する人がいません。

資料課までいったところで、

「ええーっ!? それ、誰が見たって?」

いきなり、大騒ぎになりました。

3年前に、書庫で図書係の**さんが、よく似たのを

見たというのです。

書庫を入って5メートルほどにある、鉄の階段のあたりで、

やはり髪がとても長くて、赤い(緋色っていったかな?)

ロングコートか、裾の長いワンピースだかを着た女の人を見かけて、

そのときも、

「ああ、B子ちゃんだな」

と思っていたら、B子ちゃんは全然違う服を着ていた、

というのです。

書庫は図書係の部屋の奥に入り口があって、

入り口の前の机には必ず誰かが居るように食事もずらして取っていて、

常時施錠。

入るときにはカギを借りて入り、出るときには必ず

誰もいないことを確認してから明かりを消してカギを閉めることになっています。

大騒ぎになって、みんなでかなり真剣に該当者を捜したのだそうな。

その時、

ここはもともと城跡で、残酷な話が沢山ある。

しかも、この建物を建てるときに、

一つ古井戸を埋めている。

そこに身投げしたお姫様じゃないか、

という結論(?)がでたそうです。

しかも、私には直接言われませんでしたが、

それを見た**さんには、その後あまり良くない出来事が

どうやらあったらしい。

そんな話があったとは・・・、

と驚いていると、

「え、全然知らないの? 他にもたくさんあるんだよ」と、

さも常識という風情で言われました。

霊感の強い人は、建物に近寄ることさえ出来ないそうな。

それも一人や二人じゃないらしい。

ひとによっては、敷地内にさえ入れないとか。

数年前にテレビ局が取材に来たときは、

アクシデント続出で、ほとんど撮影出来なかったとか。

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不特定多数の人が出入りする場所だったなら、

まったく気にもとめなかったと思います。

また、資料課の人の証言がなかったら、

やっぱり「気のせい」にして、そのまま流していたと思います。

私には基本的に霊感とかそういうのは無いのですが、

たまーにこういった事があると、

普通に見えてることでも、

実は他の人には見えないモノなんじゃないかとか、

たまに思ったりします。