ダンナ里帰り
ダンナが親類の結婚式に出るために有給を取って出かけていった。
二泊三日。
泊まるのはダンナの実家である。
招待状をもらったときからそわそわして、
おとといあたりからはそのことしか頭にない様子。
夫の仕事は転勤が多いのだけれど、
産まれてから就職して初めての転勤をするまでは、
ずっと同じ場所で生まれ育った。
故郷への愛着はたいへんなものだ。
田舎の村の小さな集落なので、
みんなとても良く知った人ばかり。
近所のじいさんばあさんは、
夫の小さい頃にやらかしたことを詳細に憶えている。
結婚前に、初めて実家にご挨拶に伺ったときのこと。
もうじき実家だという地点でガソリンを入れにガソリンスタンドに車を入れた。
しばらくして妙なことに気付いた。
なんか静かだ。
どちらもほとんどしゃべらない。
ガソリンを入れ終わると、店員さんは無言で紙を差し出し、
彼も無言でなんかちょっと書いて、渡して、
そのまま車を出した。
?
あれ?お金払ったっけ?
と聞くと、
おやじのつけ。
という。
なんかニヤニヤしている。
訳が分からずにいると、
「親父がまとめて払うことになってるから、サインだけでいいんだよ。
名乗んなくたってそんなの、
ぱっと見ただけで、
ああ、**さんちの○○が帰ってきたな、って分かる。
今頃、○○が彼女乗っけてきたって大騒ぎになってるべ。」
私は中学に入る前に関西から首都圏近郊に引っ越してきて、
故郷とはっきり言い切れる場所がないので、
ちょっとびっくりした。
毎回、実家から帰ってくると夫はやたら肌の色つやが良くなっている。
食べ物も水も美味しいということもあるけど、
それ以上に、リラックスできるところがいいんだろうなあ、と思う。