ぼちぼちおうち生活

浅く薄く移ろいゆく趣味と住居の覚え書き。

「駆け出し男と駆け込み女」

(あんまり重くなさそうなやつ見たいなー、  これなんてどうだ、大泉洋だし。) くらいに思って、 軽く流すつもりで視聴。

ところがどっこい。 ぎっちぎちに、みっしり人情話を詰め込んで、 それを大泉洋でコメディ風味を足した、 気合いの入った豪華キャストの映画でした。 ぎゅうぎゅうに詰め込んであって、 早口で聞き取りにくいところもあるけど、 江戸の戯作本っぽいかんじでそれはそれでよし。

 

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舞台は江戸時代。 商家のお妾の「おぎん」と、 浜鉄屋の鉄練り場でたたらを踏んでいた「じょご」は 縁切り寺へ向かう道中で出会い、 歩けなくなっていた「おぎん」を「じょご」が助けて ともに縁切り寺へ駆け込んだ。 縁切り寺に入山の儀式をする前に、 御用宿での聞き取り調査がある。 その御用宿での聞き取りがあってから入山できるのだ。

御用宿には医者見習いで戯作者希望の信次郎がいた。 信次郎はじょごの顔の怪我を治療し、 御用宿に駆け込んでくる女たちの事情を聞いたり、 怒鳴り込んでくる夫に対応したり。 縁切り寺に入山し、離縁が成立するまでに2年。 その2年間は尼として読経や食事など、 僧としての戒律の下に過ごす。 2年間は短いようで長い。 駆け込んでくる女たちにはそれぞれに事情があった。

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おぎんを満島ひかり、 じょごを戸田恵梨香、 信次郎を大泉洋

満島ひかりの名優っぷりはすごいね。 凄みのある姿と、引き込まれる語り。 戸田恵梨香は前から好きな女優さんだったので、 この2人のからみが見られてうれしい。

 

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好きなところは沢山あるけど、 まずは鯵売りの正体かな。 宿の主人、樹木希林の語りがまた良いんだ。 あとはなんといっても、おぎんさん。 おぎんの旦那、堀切屋(堤真一)の過去と おぎんの「たくらみ」。 「まゆ、め、はな、くち、あご。 ・・・どこにもキツみと渋みが程よく付いた惚れた男は(略)」 の伏線の回収も良かったなぁ。 あとこの映画、 なにげにハラハラドキドキの場面が上手いと思うんだ。 とても面白かった。 いやー、ホントに映画っていいですね。

 

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追記。 翌日、翌々日と、だんだん気になっていくところがひとつ。

 

痛みって人から分からないじゃない? はっきり目に見えたり数値に出たりしたらいいけど、 どのくらい痛いか全然分からないとか、 なぜ痛いのか原因が分からないこととか。 原因の分からない痛みに対して、 気持ちで作り出してる痛みなんだから 「痛くない」って怒鳴りつければ治る、と 思っちゃう人がいたらイヤだなあ。

もうすでに、 簡単に原因が分からない病気に対して、 すぐに精神的なものだとか甘えだとかいう人は大勢いて、 たいしたことないのに大げさにドクターショッピングを繰り返してる、 なんて言われて、 5カ所目とか6カ所目でようやく疾患名が分かるなんてことは良くある話。

そういう、ことに痛みが主訴な人たちを 追い込む手伝いをすることにならなければいいな、 などということも思ったり。 ちなみにこの映画に出てきたタイプの痛みについては、 夏樹静子の「椅子が怖い」という体験談が 同じタイプかと思われます。 さすがの夏樹静子で、一般の患者の書いたものとは 明らかにレベルの違う読みやすさ。 読み物としてもオススメです。

腰痛放浪記 椅子がこわい (新潮文庫)

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  • 作者: 夏樹 静子
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2003/07/30
  • メディア: 文庫