ぼちぼちおうち生活

浅く薄く移ろいゆく趣味と住居の覚え書き。

東京タワー

引っ越してきて半年以上も経ってから東京タワーが見えることに気づいた。

見えるのはベランダのある一点からのみ。

ビルとビルの間の、ほそい空間に小さい東京タワーが挟まっている。

昼間はどこにあるのか分からないけど、

夜になると輝いているのでそれと分かる。

東京タワーは、いろんな色でライトアップされているらしく、

見つけた夜は、青だった。

東京といえば東京タワー。

東京タワーにはちょっと思い入れがある。

小学校から中学校に上がるときに、千葉に引っ越してきた。

もともと入学するはずだった中学校では、修学旅行で東京に行くことになっており、

私はそれなりに楽しみにしていた。

小学校の修学旅行は京都・奈良でお寺ばっかりやった。

中学校では東京に行って、東京タワーに上らしてもらえるらしい。

東京タワーって、みんなぁで上れるくらい、大きいんやろか。

中におみやげやさんとかあるらしい・・・。

しかし引っ越して、みんなで修学旅行で来るはずだった東京に、

隣の県に、家族でやってきてしまった。

いわゆる千葉都民といわれるような地域である。

みんなの行く修学旅行に、自分だけ行けなくなってしまった。

なぜかそんな気持ちが抜けなくて、

ずいぶん長い間ひきずった。

なにも修学旅行でなくたって、自分でいけばいいじゃないの。

そう言われるし自分でも分かってるけど。

なかでも別格だったのは東京タワーである。

中学校で「東京タワーってどんなかんじ?」って聞いても、

べつに高いだけ、つまんないよ、なんて言われる。

蝋人形があるんだよね、とか、金魚がいるよ、とか、

聞けば聞くほど謎は増すばかりだ。

おまけにユーミンが、

金色の小さな東京タワーがお土産屋さんで売られていると言う。

わたしのプレゼント、東京タワー、って。

行ってみたい。欲しい。

やっと行けたのは、ハタチも越えてからだったと思う。

膨らみまくった期待は、さほど裏切られることもなかったけど、

おみやげやさんに手頃な東京タワーが無かったのが少し残念だった。

そして、東京タワーは内部に上るのもいいけど、

足下から見上げるのとか、近くから眺めるのもいいなと思った。

これまでいろんな家に住んできたけれど、

それぞれに違った、良いところと欠点とがあった。

今度の家も、ちょっとした欠点もあるけど、

東京タワーが見えるというのは思わぬ幸運だ。

晴れた夜にだけ見えるキラキラの小さい東京タワー。

見るたびに、

何かのご褒美かなと思う。

引越人生もそうわるくないよ、と。