「桐島、部活やめるってよ」
高校の時って、部活とか友達関係とか、そういうのがすごく大きな部分を占めてるっていうか、もうほとんど世界の全てってかんじじゃないですか。そんで、運動部でレギュラーだったり、ちょっと大人っぽかったり、ルックスが良かったりするとなんか立場が上っていうか、そんな雰囲気ってあったよね。
同じ学校の同じ学年の中でもいろんな生徒がいて、それぞれいろんなこと考えてて、一見「勝ち組」に見えてもその全員が楽しく充実した生活をしているというわけでもなくて、それぞれにいろんなこと考えてる。
この映画は、そういう心情を丁寧に描いていく群像劇。
ーーー
この映画の桐島は、バレー部でずば抜けてうまいレギュラーで、ルックスも良くって、美人で大人っぽい彼女がいる。美人の彼女は桐島が部活が終わるまで待ってて一緒に帰る。桐島と一番仲の良い友人は、いちおう野球部に籍をおいてはいるが、野球には夢中になれずにほとんど帰宅部になってる。
一方、華やかなモテ組とは一線を画して、地味に仲間同士でもりあがる映画部がいる。ときに軽んじられながらも彼らは自分たちの活動を楽しんでいる。
バレー部の試合を目前にして、桐島が部活をやめた。
誰にも言わずに部活をやめて、学校にも出てこない。
桐島の彼女も、何も聞いていない。連絡をとろうとしても返信はない。
桐島の親友も、何も聞いていない。
部活をやめて欠席したのが金曜日。
それぞれの金曜日から、土曜日、日曜日、月曜日、
面談があるから学校に出てくるぞ、という話が出回った火曜日までの話。
ちなみに、最後まで桐島本人は出てきません。
大人が観ると、いろんなことを思い出します。
バラ色だったって人もいるんだろうけど、
ほとんどの人はいろんな甘酸っぱい思い出がよみがえるんじゃないでしょうか。
細部のリアリティっていうんでしょうかね。
必ずしも青春というのは楽しいものではない・・・そんな息苦しさ。
大人になれば、高校時代の「勝ち組」がそのまま勝ちっぱなしじゃないことが分かってる。
だけど、この頃はそんなこと考えもしないよね。
この映画を観ると、きっと誰もが何かを語りたくなる。
きっと誰かのどこかに感情移入したくなる。
そんな映画だと思います。
ーーーー
うちの娘は現在高校生ですが、最初の数分で飽きて離脱。
そもそも彼女は
「映画なんて、他の人のやってることを1時間も2時間もただ見てて、何がおもしろいの?」
と言ってのけた人です。
リアルで周囲におこってることだけで十分おなかいっぱいでしょう。
地味な文化部所属。
その文化部のみんなで遠出した時に、DVDで男子部員がこれを見て爆笑していたそうな。
背が高いけど、とりたててモテるタイプというかんじではなく、中学時代は野球部。
その文化部に打ち込んでいて、自分の道もしっかり見てる。
その爆笑する様子を見て、顧問の先生は
「どこに笑える要素があるんだ???」
と不思議がっていたそうな。
先生はこの映画について、だからなんなんだ、という印象だったらしい。
そりゃそうだよね。リアルで展開されてるのを毎日見てるんだもの。
ーーーー
私が思い出したこと。
高校の時、ものすごくモテてるサッカー部の男子がいた。
どれほどモテたかというと、3年連続で文化祭のミスター××に選ばれてて、
知る限りで4人の女の子が、渡せるかどうか分からない手編みのプレゼントを編んでいた。
いったい何人の女の子がチョコレートを用意したんだろう。
3年間同じクラスだったけど、一度も話をしたことがなかった。
卒業して一年経って。
なんとその彼が同じ学校に入学してきた。
向こうから声をかけてくれた。
もうサッカーはやらないの?と聞いたら「だるい(笑)」と一言。
あれほど群がってた女の子たちは、浪人してる間に一人も残らなかったそうだ。
彼は基本的に、何も変わってない。
少なくとも見た目は全く変わっていない。
去って行った女の子たちは彼のどこが好きだったんだろう。
なんかそんなことを思い出した。
ーーーー
私の高校生活はしょぼかったけど、
娘の充実っぷりを見てると余計に自分の高校時代がしょぼく思えるけど、
この映画を見たら、そんなもんだよね・・・って気分になった。