ぼちぼちおうち生活

浅く薄く移ろいゆく趣味と住居の覚え書き。

「おおかみこどもの雨と雪」

サマーウォーズ」を描いた細田守監督の最新作。

おおかみ男のお父さんと人間のお母さんの間に2人の子供が生まれて育っていく話。

東京のはずれにある町で出会い、恋をして、下の子が生まれた直後に

お父さんは死んでしまって、お母さんは小さなアパートで育てていくのに行き詰まって

山の近くの田舎の古民家に移り住む。

お姉ちゃんの雪ちゃんは活発で、弟の雨くんはおとなしくって、普段は人間の姿なんだけど

ちょいちょいオオカミの姿になっちゃって、子犬みたいに走り回るのだ。

おおかみこどもの雨と雪(本編1枚+特典ディスクDVD1枚)

おおかみこどもの雨と雪(本編1枚+特典ディスクDVD1枚)

  • 出版社/メーカー: バップ
  • 発売日: 2013/02/19
  • メディア: DVD

ファンタジーなんだけど、絵がすごくリアルで、

ところどころの細部がやたら現実的なものだから、

どうもお金のことばかり気になってしまった。

夫の残してくれたわずかな貯金で生活、っていうけど、

端っこの方とはいえ東京のそこそこの街で、

働かず福祉のお世話にもならずにアパートに住んで

乳幼児2人を何ヶ月も(1年半くらい?)育てて、

その後引っ越しをして、朽ちかけたような古民家を自力で修理。

材料や、トマトなどのポット苗をいくつも買ってくる。

いったい総額いくらあればできるんだろうかと。

身よりのない若いお父さんが引っ越し屋さんをしながら、

いくら貯めることができたのか。

引っ越した先でハード面を整えるのって、

まずはホームセンターを探して足を確保して軽トラの貸し出しはしてるのか

自力で運び上げることができるのか、という修繕の技能以前のところから

始まるんだけど、このお母さんはどうやったんだろう。

大工道具は納屋にあったとしても、ふすま紙や障子紙は買わなくちゃいけないでしょう。

それにおそらく畳は自作できない。

あんな状態の畳は表替えや裏返しでは対処できないから、

芯の部分からまるごとぜんぶ取り替える以外にないし、

あれだけの枚数で取り替えということになると莫大な金額になりますよ。

我が家は転勤族で、転勤のたびに、畳は原状回復の懸念が出てくるわけです。

たかだか6畳間の表替えだけでもそれなりの金額になります。

引っ越し代と重なって、痛い出費です。

あの家に引っ越して、知り合いも自家用車もなしに、

いったい最初の3日間をどうやって乗り切るのか。

1日目の食事と次の日の朝食までは買っていくとして、

次の日の夕食は調理するのか、外食するのか、お総菜を売っている場所があるのか。

調理器具を使える状態にして食材をそろえる、

布団をひく場所を確保する、

それだけのことが、すごく困難だと思いますが。

制作者は、誰も知り合いのいない所(それもコンビニもスーパーも外食する店もない田舎)に幼児連れで引っ越す事をなめてるとしか思えません。

あの台所のコンロはガス管を新しいのに替えるまでは使えませんよ。

娘のワンピースを縫うにしたって、糸だってファスナーだってタダじゃない。

最近は小さい手芸屋さんがどんどん減ってユザワヤとかに集約されてて、

ちょっと近所で売ってるところ、っていうのがなかなかなくって、

遠くまで買いに行く交通費とか、取り寄せるなら送料とか、

手間もお金もそれなりにかかるのよ。

お金以外のところでも、

たとえば、

さいごに雨くんが山で暮らすことを決めるんだけど、

ふつう、不登校の小学生男子が大荒れの天気の中、

山に入って帰ってこなかったら、

間違いなく地元の消防団で山狩りになるでしょ。

お母さんは事情を聞かれるだろうし。

なんというか、

もっとファンタジーならファンタジーに徹してくれたら

よかったのかもしれないと思うんだ。

現実的な説明が入るから、変なところでひっかかっちゃって。

ハタチそこそこの頃なら、

もっと楽しめたのかなあ。