「ぐるりのこと。」
リリーフランキーと木村多江が演じる夫婦の話。
結婚して間もない頃からの10年ほどを描く。
法廷画家になった夫は、裁判の被告人を描くために
数々の裁判に立ち会うことになる。
画家の目を通して見た裁判は、被告人や関係者の細部に着目して
そこからそこはかとなくにじみ出る事件の背景が浮かんでくる。
被告人の、労働したことの無いきれいな指であったり、
証人の高級そうなハイヒールと被告人の安いソックスとサンダルの対比であったり。
妻は結婚した頃は出版社で働いていた。
幸せな妊婦生活で子供を心待ちにしていたのだが、
画面が切り替わって翌年の部屋に赤ん坊はいない。
詳細は明らかにされないが位牌が祀られている。
じわりじわりと悲しみが心を浸食していき、さらにその後、
中絶したことでさらに心のバランスを崩していく。
裁判の様子と妻の状況、周囲の人たちや兄夫婦との関係などを
年月の経過と共に丁寧に描くことで、心の傷や深い悲しみと共に
日常を生きていくことを描く映画でした。
私はわりと人からの好かれ嫌われのギャップが大きい方なので、
このダンナさんが奥さんに言う、
「みんなに嫌われたっていいじゃん。
好きな人にたくさん好きになってもらったら、そっちのがいいよ。」
っていうセリフが印象に残りました。
そうかなあ。それでいいかなあ。
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密度の濃い、ずっしり中身の詰まった映画でした。
でも生理的な嫌悪感を感じるシーンが少しあるので、
今現在すごく心が弱ってる人には大丈夫かどうか。
(最初、お昼ご飯を食べながら観ようとしたら吐きそうになった)