ぼちぼちおうち生活

浅く薄く移ろいゆく趣味と住居の覚え書き。

「何者」読了

朝井リョウ直木賞受賞作「何者」を読んだ。

以前たまたま朝井リョウの短いエッセイを2つだけ読んで

とても良かったことと、今うちの娘が大学4年生なので、

読むのなら今が旬かな、と思ったから。

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ざっくり言うと、

いまどきの大学生が就職活動をする話。

都内の私立文系の学生が、就職対策の情報交換のために仲間内で集まってる。

主な登場人物は、

主人公の拓人と、

光太郎(拓人の友達。拓人とルームシェアしてる)

瑞月さん(拓人が想いを寄せている。以前光太郎と付き合ってた)

理香さん(瑞月さんの友達で上の階に住んでる。意識高い系)

隆良(理香さんと同棲している相手)

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まあそれで読んだんだけど、

朝井リョウというのは空気とか雰囲気とかを描くのが素晴らしく上手な作家、という評判はもう本当にその通りで、なるほど賞を取りまくるのも納得だなあというかんじ。

何者 (新潮文庫)

何者 (新潮文庫)

  • 作者: 朝井 リョウ
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2015/06/26
  • メディア: 文庫

コレじゃ無い方の表紙の文庫本を買った。

最初の50ページくらいまできたところで(あれ?この人たちって何年生だっけ?)と思って最初に戻って読み返し。

就職活動を始めるから髪を切って黒染めして、という時点で3年生の11月なのかと思ったけど、これだけ細かく状況描写があって登場人物も多いのに、なぜ4年生が出てこない?サークルを引退した後でも卒業式のあたりに追い出しコンパとかあるじゃん、なんで追いコンがない。文系の場合はもう授業とか全然ないのかな。うちの娘は3年生の11月なんてヘビーな実験漬けレポート漬けで、まだ4年生に上がれるかどうか分からない状態だったけど文系はここまで余裕があるのか。でも余裕があるんならもっと早くいろいろ調べたりしないかね。っていうか同じゼミの先輩とかサークルの先輩とかに聞くよね。

などと思いつつ、まあいいか、と流して読み進めるも、あまりにも語り手の主人公と思考回路が違いすぎて、理解するのに苦労する。

たとえば理香さんと同棲している隆良のことを、

「自分の家にいるにもかかわらず、チノパンにきれいなシャツを着ていた。あのふたりは、格好悪いところをお互いに見せることができていない。一緒に暮らすってそういうことじゃないと思う。」

とあるんだけど、(しかもこの記述何度も出てくる)

そういうことじゃないと思う、っていう意味が分からなくてそこで詰まる。

そういうこと、がどういうことを指しているのか理解できない。

否定的なニュアンスで書こうとしているのは分かるのだが、自分の家にいるにもかかわらず、ちゃんと身綺麗にして、ちょっとチノパンの足首のところを折り返したりなんかして、インテリアもちょっとオシャレなやつをそろえて、ちゃんと食器にもこだわって、って。

・・・・それって、エライじゃん!

世のお父さんたちに、ちょっとは見習えと言いたい人もいるはずだ。

ってかその前に私が見習うべきだよ。

新婚時代にそうやって頑張ってた人も多いはずだし、

大抵の人はだんだん慣れと面倒くささとでやらなくなってしまう。

最初っからやらなかった我が家なんて言語道断である。

我が家の方針は、いかに効率よく短時間で疲労を回復し、栄養と睡眠を補給して万全の状態で家を出すか、というまるでレーシングカーのピットのような方向性だけど、プライベートな時間も美的センスには手を抜かずお洒落に暮らしたい、センスを磨くにはまず生活から、という人たちだって居るはずだ。隆良と理香はその点で非常に価値観の合うカップルだと思う。

それから、これは隆良だけど、

「前、理系に行っときゃよかったみたいなこと言ってたらしいけど、(中略)あの人たちがやってる実験ってつまり、団体の一部として活躍するためのものだろ?(後略)」

という記述。

これまた頭に浸透していかなくて理解に時間がかかる。

ウチの娘は希望した学科に進むことができたので、座学も実験も面白いと言っていて、好きなことを親と国の金でやらせてもらってありがとうございますと言っていて、実験はつまりやってみたいから。理系ってそういう人が多いと思うんだけど。

がんばって中盤あたりまで読み進めると、後はどんどん進む。

おまけに終盤までくると、最初に持った疑問がすっきり回収されて、ああなるほど、だからか、と、きれいに納得させてくれました。

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それにしても作者さん、その場の空気の再現に長けた観察力のある人で文章が上手いから書いてるのかと思ったら、書きたい事がガッツリあってそれを発散させる人だったんですね。

よほどFacebookあたりの意識高い系に思うところがあったんだな・・・。

イマドキの就職活動の学生側の世界を読みたいと思ったんだけど、モデルになってる学校なんてもう早稲田大学の校風が濃すぎて、ちょっとぐらい設定をいじったところで他の学校になんて見えない。小さい劇場での演劇、仲間内のライブ、クリエイティブ系への就職、留年してても一流企業を物怖じせず狙える大学・・・。そして今の早稲田がお金持ちのお坊ちゃん大学だというのも、これほど登場人物が多いのに一度も奨学金返済の話が出てこないところに反映される。一年近く留学して、母親が田舎から出てきて下宿に居着いてずっと暮らせる広さのアパートに東京で住んでる、ってのもなかなかのもの。

ああ、私、書きすぎだ。

まあいいや。

ブログもツイッターも、

何者かになるために書く人もいるんだろうけど、

吐き出すために書いてる人もいると思うんだ。

私もそうだし。

書いて読み返して、折り合いをつけて次に進む。

それに、努力を実況中継しながら頑張るのも、

ブログやツイッターに載せるために料理したり掃除したりするのも、

それがモチベーションUPにつながるのならば、

何でもいいと思うんだ。